想定外のことが起きすぎて、初日だっていうのにこの疲労感。

彼を見上げれば「C棟は丸ごと俺らの」って笑った。そうだとは思っていたけど、やっぱりこの人はロイヤル部の人らしい。



……だって聞いていた通り、綺麗な顔をしてるものね。

少々髪色が奇抜なのに、まったく嫌味がない。



「ここは俺らの生活空間だからねえ。

寮があんのは知ってる〜? 俺らの寮はここなの」



生徒会室はリビングだよ、と微笑む彼。

わたしが2年生だということはおそらく知ってるんだろうし、わたしのタメ口にも何も言わないあたり、おそらく同い年。



その"リビング"に向かって歩きながら聞けば案の定、彼は同い年だと言った。

それから愛でるような甘い声で「騎士 椛(きし いろは)だよ〜」と名前も教えてくれる。



「じゃあ、あなたが『騎士』なのね」



「そうだねえ。

……つうか、ロイヤル部のこと何も知らずに入ってきたってマジなんだ?」




……そんな噂になってる、みたいな言い方されても。

まあ実際、知らずに入ってきたわけなんだけど。それはどう足掻いても事実なんだけどね。



「ハイ、到着〜」



考え込んでいるうちに、たどり着いたリビング。

またもや両開きの扉で、もはや何もおどろかなくなっている自分が怖い。慣れって怖い。



「緊張する?」



扉に手をかけた彼が、首をかしげる。

それにあわせてオレンジベージュが流れて、それすら彼の魅力に拍車をかけた。



「まったく。

……むしろ早く帰りたいなって思ってる」



「ふは。……んじゃ、対面しようか」