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「……え?」
「だから、ルノとルアが高熱出してんだわ〜。
普段なら俺が看病してやるけど、俺今から声かけてある教養学科の生徒んとこに、いっちゃんと行かなきゃなんねえの」
わかる?と椛が首をかしげる。
いつみ先輩に彼がわたしの件であの子達を呼び出すよう指示されていたのを知っているから、それは構わないのだけれど。
やっぱりルノくん、さっきバランス崩してたのも体調が良くなかったからなのか。
……だいじょうぶかな。
「姉さんはいくみさんと出てったまま、帰ってこねえし。
莉央はルノのとこついてくれてんだけどさ、そうなるとルアの面倒見るヤツがいねえんだわ」
「……うん」
「しかもルアの方が熱高いし、
姫にルアの面倒見るのお願いしたいんだよねえ」
……え?と。顔を上げる。熱を出した相手の看病くらいいくらでもするけど、ルアくんって人と会うの避けてるんじゃなかったっけ。
わたしが行って大丈夫なの?初対面なのに?
「……ルノくんじゃなくて、ルアくんの方よね?」
「そ。ほんとはルノでもいいんだけど……
あいつも男だしな〜。弱ってる時に部屋にお姫様とふたりきりで、しかも平常心失うぐらい高熱だといくらルノでも何するかわかんねえじゃん?」
「はあ……」
「そういう男の理性的な意味で、ルアなら絶対大丈夫だってわかってるから、そっちを姫にお願いしたんだよねえ。
だいじょーぶ、猫みたいなヤツだから」
男の理性的な意味、というのはさておき。
渡されたのは、『No.C01』とだけ書かれたシンプルなカード。
C棟の寮、つまり個人部屋のカードだ。
いつみ先輩が自分の隣の部屋がわたしの部屋だって言ってそこのカードもくれたけど、わたしの部屋のカードは『No.C06』。01はルアくんの部屋らしい。



