「あ、おひめさま発見〜」
とにかく数分間その場から動けずにいれば、唐突に向こう側から扉が開いた。
ん!?と目を見張って固まるわたしに、中から出てきた彼は、ふっと笑う。
ライオンのたてがみみたいな、オレンジベージュの綺麗な髪。
すこし長めのそれを風にあそばせた彼は、扉を脚で止めてこちら側に身を乗り出し、「あれ」と扉の上を指差した。
「……監視カメラ」
「そう。ばっちりうつってたよ〜。
はやくかいしゅ……連れてこいって言われたから、迎えに来ましたおひめさま」
にこりと柔らかく笑ってわたしの手を掬い上げ、そのまま手の甲にキスを落としたその人。
……なんでキスされたの、わたし。
っていうか、さっき思いっきり「回収」って言いかけたでしょ。
笑顔は素敵だけど、なんとなく否めない気持ちが残る。
「あれ、照れねえんだ?」
「生憎……慣れてるのよね」
「なに、ホストクラブでも通ってんの?」
ケラケラと笑う彼が、「どうぞ」と触れたままだった手を引いて、わたしを内側に招き入れる。
ほかの学校の普通と比べればもちろん桁違いだけれど、中の様子はほかの棟とさして変わりはなかった。
つくりは、変わらない。
でもほかの棟と違って照明はほとんどなくて、昼間なのに薄暗い。なんともいえない妖しい気配がする。
……いや、棟に丸ごと鍵をかけちゃってる時点で、妖しさしかないけど。
生徒会ってそんな厳重だっけと思いながら、隣で揺れるオレンジベージュに目を向ける。
「わたし、生徒会室に呼ばれたのよね?」