小説家「中山みなみ」としてデビューできた私は、有頂天だったが、現実は厳しかった。

書きたい話を書かせてもらえなかった。

テーマを与えられ、書きたくもない内容の話を書かされた。

自分の書きたい話じゃないものに魂は吹き込めない。


当然、売れなかった。

書いても書いても売れなかった。


ある日、担当の松田さんが言った。

「あなた、うちの編集部で働く気ない?」


小説家「中山みなみ」の事実上の終わりだった。
 


しかも、編集部は徹夜も続く職場環境で、余計なことは考える暇がなく、歯車と化した。


そんな中で、田舎に帰れない私は、正規入社組に負けるわけにはいかないという気負いもあり、限界を超えて頑張り続けていたのも事実だ。


そろそろ本当の限界だったのだ。


憧れた都会の生活は虚構だった。