「じゃあ、もう帰るよ」


香澄は気を取り直して、綾女を真っ直ぐ見て言った。

「香澄、子守花を見つけた時のこと、覚えてるね?」

「うん。わかってる」

「それだけは守りなさい。まだ早い。タケルにも言ってはいるが、ここを出て行く時のことだ。忘れているかもしれない。それにおまえも望むことじゃないだろう?」

「うん。それだけは嫌だよ」

「じゃあ、行きなさい」



「明日は来られないと思う。皆美がいいって言ったら、ツリーハウスに泊まるの」

香澄は部屋を出る時、振り返って言った。

「わかった」

香澄は一礼して障子を閉めた。