私は机に座り、引き出しから便せんを取り出すと、走り書きで「退職届」を書いた。

…中山皆美(なかやま みなみ)

最後に自分の名前を書くと、封筒に入れ、退職願ではなく退職届と表書きした。


その退職という文字を見つめた。


辞めてどうするの?


今さら田舎には帰れない。

しばらくは貯金でやっていけるだろうけど。



また、夢を追いかけるか…

書かされるのではなく、自分が本当に書きたい話を書いて。




心を決めた私はまだ来ていない上司の机に退職届を叩きつけた。

その音に驚いてみんなが振り返った。

今さら、何?

私が辞めればと思っていたくせに。


真奈美は戸惑った顔でこっちを見ていた。

私はきびすを返して、彼女の横を無視して通り過ぎた。

彼女もまた、振り返らなかった。