私と香澄がなんとか過ごせる程度に掃除したが、タケルは隅々まできれいにしようとした。

「タケル、もういいんじゃない?」

「いや、きれいにしたいんだ。
後はおれがやるから二人は休んでて」

そう言ってタケルは手を休めなかった。

私と香澄は顔を見合わせた。


「わかった、タケル。きれいにしよう」

私たちも手伝うことにした。



3人で頑張った結果、中はなんとか、昔遊びに来ていた頃くらいにはきれいになった。

「ふわあぁ~、疲れた~」

香澄はかなり疲れた様子で、ごろんと大の字になった。

ふと、光の具合に気付いて縁側の方へ行った。

「ねえ、香澄、タケル。見て!きれい」

私は香澄とタケルを大きく手招きして呼んだ。


「ほんとだ」

「うわぁ~」

やって来た二人も感嘆の声をあげた。

縁側から見える夕焼けは本当にきれいだった。


都会と違って空が広い。

夕焼けの色のグラデーションの幅が違う。


3人でしばらく縁側に座って眺めた。

その並び方は昔のままだった。

あの頃、夕焼けって普通のことだったな。

何で、今はこんなに感動するコトになってしまったんだろう。


「あ、そうだ。水道と電気はついたけど、ガスはどうだろ?」


「ここはプロパンだから大丈夫だと思うよ」

「そう?じゃあ、お風呂沸かそう」

私はさっそくお風呂の準備をしに行った。



「お風呂だって…」

香澄とタケルは顔を見合わせた。

「掃除したからだよ。掃除した後は普通お風呂だろう」

「そっか」

「それに香澄は入りたいだろ?」

「うん、まあね」

「じゃ、いいじゃん」

「そだね」

香澄はふっと笑った。


「それはそうと、飯はどうするんだ?」

「それもあって、実家に行ってこようかと思ってたんだけどね~」

「そうだよな。この辺食べ物買えるところはないもんな」

「一応カロリーメイトとか、そういうの車に積んでるから」

「そっか」


「じゃあ、私もお風呂に入るわけだから手伝ってくるね」

香澄はそう言って立ち上がった。