翌日、香澄が家から車を取ってきた。

「じゃあ、行こ」

玄関で香澄が言った。

「よっしゃー!行くぜー!」

タケルが妙にテンションが高い。

「なによ?どうしたの?」

「いやあ、だって帰るの久しぶりだからな」

「そうなの?いつ以来?」

「えっと、皆美と一緒だから6年振りか?」

「え?なんで私と一緒なの?」

「あ、いや…そりゃ、おまえのおばちゃんからおまえが東京に行った事聞いてたからさ。同じだな、と」

「ふうん…」

なんか歯切れの悪いタケルだったが、香澄が「まだぁ~」と声をかけてきたので、慌てて出たのだった。



香澄が乗ってきた車はどう見ても走り屋の車だった。

「え?これで行くの?」

「なに?いい車でしょ~」

「いや、すっげーかっこいい!」

タケルはさすが男の子、なんか興奮気味だ。

「これ改造してるの?」

「ううん。ちゃんとメーカーの純正だよ」

確かにCMで見たことがある。

「ランレボ?」

「ううん。ランエボ」

「そう…」


私とタケルは後ろに乗り込んだ。

こんな車なのに、後ろも広くて寛げた。

「じゃあ、行くよ~」

そう言った瞬間、香澄のアクセル全開の運転で、私たちはシートに押しつけられた。「ひぃいー!」

私とタケルは悲鳴をあげた…

急につんのめったかと思うと向きが90度変わっている。

交差点を曲がったらしい。

「香澄ー!タイヤがキャーキャー言ってるー!」

「そう?」

高速の入り口が見えた。

料金所でちょっとスピードを落としたみたいだが、バーに接触ぎりぎりで通り抜ける。

「香澄ー!ETCは20km以下って書いてたー!」

「そう?」

目の前にあっという間に次の車が迫る。

ぶつかると思った瞬間、車が走行車線に移り、あっという間にまた追い越し車線へ戻る。

さっきの車はあっという間に後ろに消えていった。

私、さっきから「あっという間」ばっかり言ってる…