「皆美…、田舎の郷土資料館、行ってみる?」

香澄が遠慮がちに言った。


「えっと…」

どうしようかと思っていると、目の前でタケルが私の答えを息を飲んで待っていた。

「なんなのよ」

「い、いや…」


「わかったわよ。行くわよ」

「え?ほんと?」

タケルが驚いた顔していた。

「そう?良かったわ」

香澄はいつもののんびりとした口調に戻った。

「だって、東京じゃやっぱり無理だと思う。ね、タケル」

「そうだな」

タケルがうんうんとうなずいた。

「それに、私…本当の子守花を見たことないもの」


「え?」

タケルと香澄が同時に驚いた。


「あれ?二人とも見たことあるの?」

「あ、いや、言われてみればおれも見たことないや」

「そ、そうだね…」

タケルと香澄は顔を見合わせて言った。

「じゃあ、やっぱり、田舎に帰らなくちゃ。」

私は元気よく言った。

「でも、実家には寄らないからね…」

そして、元気なく言った。

「うん」

「わかった」

タケルがVサインをすると、香澄もVサインをした。

「あんたたち…」

私は苦笑したのだった。


森川村へは翌日帰ることになった。

香澄が車を持ってくると言う。

確かに、本数の少ないバスやらで時間に制限が出るより、そっちの方が動きやすいかもしれない。

ただ、私は免許を持っていないので、香澄にばかり運転させることになり申し訳なかった。

驚いたことに、タケルも免許は持ってなかった。