「その司書の人と話したの?」

香澄はタケルに聞いた。

「ああ。気味の悪いやつだった」

「タケル!ひどい言い方。親切な人だったじゃない」

私はタケルを睨んだ。

「あ、ごめん。そうだな」

タケルは真面目な顔で謝った。


「図書館にずっといて、全部の蔵書を覚えてるんだって」

私はすごいよねというニュアンスで言った。

「へえー、さすが司書だね。何年くらいいるんだろう?」

「香澄」

「あ、ごめんごめん」

タケルが香澄に何かを注意した。

「何よ?かなり長いんじゃないの?だって、全部の本覚えてるんだよ?転勤ってないのかな?」

「そうだね。司書がころころ転勤したら、蔵書のことわからなくなって困るから、あんまりないんじゃないの」

「そうだね」

私は納得顔で言った。

それを見て、香澄とタケルが顔を見合わせて笑顔になった。


「なんか、あんたたち変…私、変なこと言った?」

「いや、そんなことないよ」

「うん、ないない」

二人で妙に気が合う感じで否定していた。


タケルと香澄は、私の知らないことを何か知ってる。

そのことは確信できた。

私はちょっと胸に小さい痛みを感じた。