玄関のチャイムが鳴った。

「ただいま~」

「あ、香澄、お帰り~」

「よお、お帰り」

手をひらひら振りながら入ってきた香澄に、座ったままタケルが片手をひょいと挙げた。


「何かわかった?」

私はさっそく聞いてみた。

「う~ん、なんとも…」

「綾女様でさえ知らないの?」

「お子守様と子守花って名前は似てるけど、それは地元の人たちが勝手に言い出しただけで、直接関係ないみたいよ」

「そうなの?」

「ほら、だって、六ヶ枝祭の時に子守花が関係する?」

「あ、言われてみればそうだね…」

「ということは、お子守様とは関係ないから綾女様もよくわからないんだ」

タケルが言った。

「だから、香澄はそう言ってるじゃない」

私は意味のないまとめをしたタケルにつっこんだ。

「あ、そうですか。はいはい。おれは黙ってますよ」

タケルは、またすねて横を向いてしまった。


「でもね、村の郷土資料館の鍵は預かってきた」

香澄が何やらごちゃごちゃした鍵の束を見せながら言った。

「あ、そうなんだ。今日も図書館の司書の人に言われて、やっぱり地元のそんなとこしかないかなって思ってたの」

「え?」

香澄がすごく驚いた顔をした。

「え?なに?」

私は香澄が驚いた理由がわからず戸惑った。

「あ、えっと、おまえが帰る気になったからだろ?」

タケルが横から言った。

「ああ…そっか」

(確かにあれだけ帰れないと私は言っていたのよね)

それでも、実家には寄るつもりはなかった。