「そう言えば、私、子守花をどう使えば蘇るかも知らないよ」

「おれだって知らない」

「あの頃は、白い花が人を蘇らせるとしか言ってなかったよね」

「そうだな」

「ねえ、タケル。他に何か思い出さない?他に何か言い伝えはなかったっけ?」

私は頬杖をつくタケルの手を取って言った。

タケルはちょっと体勢を崩しながらもその手を引っ込めた。

「なに?」

「いや、そんなにくっつくなよ」

タケルが赤い顔して言った。

「なに?何照れてるのよ。今はそんな話してるんじゃないよ」

「気にするなよ!」

何かをごまかすようにタケルはすねた。

「子供みたい…」

私はちょっと呆れながらも、そんなところは昔と変わってないなと思った。

昨日は腕を組ませてくれたくせに…

「で、そんなこと言われても、他には何も思い出せないよ」

タケルはぶっきらぼうに言った。

「そう…。そうだよね。私の方が頭良かったのに思い出せないんだもん。タケルが覚えてるわけないよね」

「なんだ、そりゃ…」

ちょっとタケルが呆れ顔をして、そしてまたすねた。

「どうせおれは…ぶつぶつ」

「はいはい。それでもいつも私を助けてくれるナイトさん、姫は感謝してますよ」私がタケルの顔をのぞき込んで笑顔で言うと「ふんっ」と言って彼は、さらに横を向いた。

その顔がさっきより赤いのに私は気付いていた。



あの頃、夕焼けの中、3人で川沿いの道をいつものように並んで歩いていたことがあった。

私は左手を香澄の右手とつないで歩いていた。

タケルは私の右側で当時のヒーローの歌を歌いながら、右手に持った木の枝を振り回していた。

私は空いているタケルの左手を見て、そっと繋いでみた。

タケルはびっくりした感じで歌うのをやめてこっちを見た。

「手、つなごうよ」

私は思い切って言った。

「お、おれはいいよ」

タケルは慌てて手を引っ込めて、また歌いながら枝を振り回し始めた。

その顔が赤いのは夕焼けのせいか、違うのか、あの時はわからなかった。


そう言えば、タケルの手をつないだ時、私とつないでいた香澄の手が一瞬強く握られた、そんな感じも思い出した。


そうだ。

それでやめておけば良かったって、あの時思ったんだった。