私と二人の物語

「私の方が妹です」

「え?そうなの?」

「はい…」

「そ、そっか…。きっと、何か事情があってそう言ってたのかな?それで、君は身体の方は大丈夫だったのかい?」

彼はそんな風に思ってくれる人だった。

「はい、頭を打ったけど、部分的に記憶を失っただけで…」

余計な心配はさせたくなくて、手術をしたことまでは言わなかった。


「そっか…」

その時の彼の表情は、私に会えたことと、記憶を失っていること、さらに姉を亡くしていることとの相反する思いで複雑だった。

彼は、躊躇しながらも、私を見た。

「記憶がないってどのくらい?」

「…ちょうど大学から事故の辺りまで…かな。それより前は何とか」

彼にしてみれば、自分と一緒だった時の記憶だけを失っているということ。

その答えに、さすがにショックを受けている感じだった。

私はそんな彼を少し見つめた。

はっきりしたものじゃないけど、彼を知っている…

そんな感じだった。

彼とのことは秘密だったはずだから、うちには写真一つなかった。

ケータイも事故の時に壊れたので、あきらめてそのまま捨てていた。

家政婦の好江さんからも、何も聞いてはいない。

だから今日まで、この男性の存在はまるで気が付かなかった。