私と二人の物語

しばらくその景色の中にいた。

「やっぱり少し寒いな」

「うん、下に降りよっか」

「そうだね」

私たちはさすがに吹きっさらしでは我慢できなくて、下のテラスの方へ降りた。

平日だからか、そこも誰もいなかった。

そのテラスは石造りで、ローマの円形劇場の客席みたいな階段状になっている。

先端の広い部分は山から少し張り出していて、手摺りは右手が石造りで、左手は鉄製。

鉄製の方は半円形にせり出していて、足元まで景色が見える。

どこに座ってもよく見えるので、階段に座るのもいい。

私は先端まで降りた。

悟はわかっているように付いてきた。

私は石造りの手摺りの方へ行くと、少し身を乗り出した。

ここから見える風景が最初見た絵の場所。

下から吹き上げてくる風が少し冷たかったけど、周りに木があるせいで塔の上よりはマシのよう。

絵を思い出して、その景色はずっと見ていたかった。

ふと気が付くと、すぐ隣で、悟も同じように目の前の景色に取り込まれていた。

「最初に見せてくれた絵はここからの景色だよね」

「うん」

悟が景色を見たまま頷いた。


『君が、そこからの風景が好きだったから…』


最初に会った時に彼が言った台詞を思い出した。

「うん。大好き」

私は、彼に聞こえないくらい小さな声で、そう答えた。