約束の時間に行くと、もちろん彼は先に待っていた。

私は、早めに行くと彼がさらに早く待つようになるので、あえて時間どおりに行くようにした。

この季節、寒空で長く待たせる訳にはいかない。

ほんとはその辺のカフェとかにすればよかったのだけど、席数や場所などの関係で、ちょうどいい所がなかった。


私たちは、駅の側の坂のところにあるバス停からケーブル下駅行きのバスに乗った。

それは西神大学の横を通り15分弱でケーブル下駅に着く。

だから、在学中はそれなりに乗ったはずのバスだった。


悟に促されて真ん中のドアから先に乗ると、私はどの辺に座ろうかと振り返った。

悟は一番後ろの右端を指差した。

「君はいつもあそこに座ったよ」

私は頷くと、その窓際の席に座った。

そして悟は隣に。

私はそこからの風景を実感すると、

「うん、うん」

と頷いた。

悟はそれを見ていつものように微笑む。

それに後ろは暖房も効いていた。