私と二人の物語

アトリエには、サンルームの方に向けて作業用のデスクが2つあって、ひとつはその上に斜めになった台があって、もう一つは大きな画面のパソコンと大きなタブレットがやはり斜めに置かれていた。

そして山側に棚があって、サイズを替えた区切りの中に、それぞれ絵がたくさん入れられていた。

そのほとんどはキャンバスではなくてイラストボードだった。

「そっか。イラストレーターだもんね」

「うん」

悟は頷いた。

「どれでも好きなように見ていいよ」

「うん」

私は遠慮せずに、全部見るつもりだったので、左端の絵から順に取っていった。

人物、物、風景、デザイン画的なものなど、いろんなモノが描かれていた。

意外に作風はそれぞれ違っていた。

線が細かったり太かったり、色が鮮やかだったり淡かったり。

プロのイラストレーターだから、依頼に応じて描き分けているんだろう。

それでも、どことなく個性を感じた。

一つ気になったのは、人物。

特にモチーフのない女性が多かったけど、何枚かは明らかに一人の女性だった。

それはもちろん「私」だとわかった。

そして、昨日見たのと同じ様なスケッチブックばかりが入った棚もあった。

それは、ほとんどがあの六甲山からの風景だった。

夜景もあって、惹きつけられた。

それは、そう。

これは私が見るべき絵だったから。


私が絵に集中していたので、悟はデスクの椅子に座って黙って私を見ていた。

いや、「戻ってきた私」を見ていたのかも知れない。