私と二人の物語

篠田さんによると、私は、自分のせいで美結が死んだと思った直後に、しばらく意識不明の状態だったこともあり、自分の意識を美結に切り替えた。

実際にそうなのかは別として、一種の人格障害に心因健忘が重なったような、そんなものかもしれないと彼は言った。

要するに、美結だと思い込んだらしい。

確かに、日頃よく、悪戯で相手と入れ替わることをしていた。

きっと、自分を責める気持ちから心を守るための手段として、それを選んでしまったのだろうと、彼は言った。

そして、皆が私の名前を呼ばなかったのは、事故のことを気にしてではなく、私が美結だと思い込んでいたからだった。

確かに、どっちで呼べばいいのかわからなかっただろう。

普通に「美結」と呼び続ければ、もし「美緒」に戻った時、その反応で分かったかもしれない。

でも、自分を守るために「美結」になっているのに、その時まだ美結が意識がないままなら自分を責める気持ちに変わりがなく意味がないと、篠田さんが、皆になるべく名前を呼ばないようにと言っていたらしい。

美結が生きていることを言わなかったのも、そのためで、美結が目覚めさえすれば、私にそれを伝えられて、全てが解決すると考えられていたらしい。