私と二人の物語

ケトルを火にかけたところでブザーが鳴った。

店の方から聞こえるその足音からすぐに誰かわかった。

「こんちわ~」

つくしさんが階段を振り返り気味に上がって来ながら言った。

「こんにちは。昨日までお疲れさま」

「美緒さんこそ、お疲れさまでした」

上がって来たつくしさんは、そう言って私の前で軽く頭を下げると、悟を探すように向こうを見た。

彼女は悟がデスクで仕事をしているのを見ると、「悟~」と声を掛けて手を振りながら、ソファーの方に行った。

「いらっしゃい。昨日までほんとありがとう。お疲れさま」

悟は手を止め、椅子をつくしさんの方に向けると言った。

「いえいえ」

彼女はソファーに座ると、そこからしばらく悟と個展のことを話していた。


私は3人分の珈琲を淹れるとソファーのテーブルに置いた。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

つくしさんはその一つに手を伸ばした。

「悟、珈琲入ったよ。こっち座る?」

私が声を掛けると、彼は「そうだな」と、ペンを置いてやって来た。