「なんか、すみません」

院長室のドアを閉めたところで、一呼吸を置いて私は言った。

「いえ」

彼は何でもないという感じで微笑んだ。

「それで、本当に行かれます?」

彼は優しく言った。

「あ、はい」

そういう風に気を遣われると断れなかった。

それに、お茶くらいなら…


地下の駐車場まで降りると、職員用スペースに、前に聞いた彼ご自慢のSUVが停まっていた。

「カッコイイですね」

「ありがとうございます」

彼は照れるように笑うと、車のロックを解除した。