「なあ、美…」

父が私の名前を呼びかけてやめた。

言いかけたのは珍しい。

少し酔っているのかもしれない。

「なに?」

「その…、わかっていると思うが」

「わかってる」

私は、少し言い捨てると、そのまま背を向けて、階段を上った。


その日は物語をたくさん書きそうだと心配していたけど、結局書く気が失せた。

それはそれでよかった。

明日になったら冷静に書けると思う。