けれど、お店の中には店主以外、だぁれもいません。

こんな時、店主はだらりとカウンターの中で突っ伏してしまいます。

コーヒーのみたいなぁ……

そんな声を、ぴぴくぴく、クロネコのお耳が捉えました。

「コーヒー!」「コーヒーですっ!」「コーヒー!」「コーヒーコーヒー!」

わらわらと足元で右往左往しながら、彼ら彼女らだけに聞こえる声で繰り返すのは、首にピンクのリボンを巻いたクロネコ達、14匹です。

そのリボンには銀のバッジがついています。

A、そして順番に2~9、P、KT、Q、KGと彫り込まれています。

ピンクのリボンは、給仕係りのクロネコです。

みんなで店主のぼやきを注文だと思い、あわあわ慌てます。

Aのバッジをつけたクロネコが、サッと手をあげました。

「まずは皇帝に報告しましょう!」

「「「おーっ」」」

一致団結の速度は目覚ましいものがあります。

みんな揃って手を振り上げると、ぽふぽふとどこかへ駆けていきました。