森下にも忍の車に乗ってもらって、目的地に向かった。

森下が助手席に座って忍が運転したわけだが、後部座席で、遥香が真ん中に乗ろうとすると、季世恵が「私が真ん中ね」と言った。

「それは悪いですよ。私が座りますから」

「父の隣はだめよ」

「は?おいおい、それどういう意味だよ」

「若い教え子に変なことさせられません」

教授が抗議したが、季世恵はきっぱりと譲らなかった。

助手席で森下が「楽しそうでいいですね」というと、「楽しくないよ」と教授が口を尖らせたのだった。