うつりというもの

夜中のことだった。

美智子は、何かの気配で目を覚ました。

寝室に自分以外の誰かがいる…

そんな気がした。

薄目を開けながら、足元のドアの方を見た。

閉まっている。

ゆっくりと、左右を確認した。

特に誰もいない。

少し、ほっとした。

でも、とりあえず目を開けて、視野を広くする様に、天井を見ていた。

そして、耳で部屋の全ての音を聞くつもりで、神経を集中した。

しばらく、そうしていた。

すると、美智子は、右側から聞こえてくる音に気が付いた。

布が擦れる様な、微かな音が、ベッドの下から上がってきていた。

身体に震えが走った。

それでも、意思に反して視線は右に向いた。

それは、少しずつ見え始めた。