うつりというもの

10分も経たずに、近くの交番から一人の警察官がやってきて、風呂場の外とか、いろいろ確認したが、小石を敷き詰めた地面の所為で足跡も確認できず、特に遺留品みたいなものはなかった。

風呂場は、道路から裏手になるので、一度塀の内側に入ってしまえば、覗きやすい位置だった。


「まあ、直接の被害がなくて幸いでしたね」

「…はい」

美智子は、一人暮らしなのが急に恐くなっていた。

「明日、とりあえず交番の方に届けを出しに来てもらえますか?」

「はい。わかりました」

「では、近所を捜しているもう一人と合流して、私ももう少し捜してみますから。また何かあったら通報してください。それと、ちゃんと鍵を掛けておいてくださいね」

「はい、ありがとうございました」


美智子は、敬礼をして自転車で去って行った警察官を見送ると、すぐに家の中に入って鍵を掛けた。

そして、家中の窓を閉めて、それも全部鍵を掛けた。

一安心だが、そのままお風呂に入るのは恐かった。

お風呂は明日の朝入ることにして、美智子は2階の寝室に上がった。

寝室に入ると、さっさと着替えてベッドに入った。

明かりは消そうか消すまいか悩んだが、点けているのも見えすぎて恐かった。

ベッド横のスイッチで明かりを消した。

しばらく、その暗がりの中で息を潜めていたが、特に物音が聞こえるわけでもなかった。

美智子は、そのうち眠ってしまった。