30分は経ったかというくらいに、季世恵が資料を置いた。

「なるほどね…」

「な、俺達が言ってたのが嘘じゃないとわかったろ?」

教授が、頼む誤解なんだ…という感じで言った。

「うん、わかった」

「じゃあ…」

「私も行くわ」

教授はホッとした笑顔が固まった。

「で、何で行くの?電車?車?」

教授を意に介さず、季世恵は遥香に聞いた。

「あ、そこまではまだ考えてませんでした」

「こういうのはやっぱり、車がいいわよね」

「そうですよね…。私は免許持ってないんですが」

と、遥香が二人を見たけど、

「私は免許あるけど運転できないわ」

「俺は運転できるが、車がない」

「で、どうするんですか?」

遥香は眉間にしわを寄せた。

「レンタカーでも借りるか?」

「あ!」

遥香がポンと手を打った。

「忍ちゃん呼びましょう」

「ん?連絡付くのか?」

「はい。大丈夫です。忍ちゃん、なぜかよく連絡してくるので」

「ああ、そう…」


松山忍が、在学中から遥香に好意を寄せていることを知っている教授は、可哀想な彼を想いながら、遠い目をした。

遥香が早速、松山忍に連絡をすると、彼は一仕事終えて、時間が取れるようだった。

彼はフリーの風景カメラマンをやっていて、所有する車はオフロード用の大きな四駆だった。

4人ならゆったり乗れて、荷物も余裕で積める。

教授は、可能な限り目的地の選定と、現地の教育委員会等への協力依頼をするというのと、各自、それなりの準備もあるので、二日後に集まることになった。