赤井は、鑑識課に行くと、またマンションの映像を見始めた。
「おまえの言うとおり、何も持っていない」
「それはそうでしょ。現場にも何も無かったんですから」
「それだよ、それ。おかしいだろ?彼女は何をしにあの時間に出掛けたんだ?」
「コンビニとかじゃないんですか?」
「あほか、おまえ。それなら最低でも財布は持つだろうが」
「ああ、そりゃそうですね」
赤井は呆れた様に三田村を睨んだ。
ケータイの履歴も、あの日は特に掛かってきたものはなかった。
というか、その前も、SNSを含め、彼女にはほとんど連絡がなかった。
だから、誰かに呼ばれて外に出たという線もまずない。
「かわいそうな娘だよな…」
赤井は、ポツリと言ったが、
「それはそうとして、これ、本当に本人か?」
「え?どういうことですか?」
「だから、こんな時間に何も持たずに出掛ける必要がないってことだよ」
「はあ?」
「鈍い奴だな…。だから、犯人の一味に女もいて、わざわざ被害者に化けて、この時間まで生きていた様に見せ掛けたってことだろ?」
「でも、ほぼ死亡推定時間ですよ?意味ないでしょ」
「あ…」
三田村の言うことももっともだった。
赤井は、もしかして死亡推定時刻まで何か細工してごまかしてるのか?と、思った。
でも、あの怪奇な出来事を目撃した自分が、やっぱり刑事として現実で物を考えていることに気が付き、苦笑しながら、画質のあまり良くない映像を繰り返し再生させた。
何回目かで、ふと気になった。
「おい」
「はい?」
「これ…」
三田村は赤井が指差したところを顔を近付けて見つめた。
「あれ?」
三田村も気が付いた。
「これ、服がおかしいですよね?」
「だろ?何か後ろから引っ張られてないか?」
確かに、出口に歩いていく女性の服が後ろに引っ張られている様な動きをしていた。
「糸が何かに引っ掛かったんですかね?」
「わからん」
「それでふらついているのかな?」
赤井は三田村を見て、もう一度見直した。
「まあ、ふらついているとは思ったが、糸くらいでふらつくかよ」
部屋からは、特に薬物は見つかっていない。
具合が悪くてふらついているのか、本当に、後ろから何かに引っ張られているからなのか…
赤井は、とりあえず、最初に見た時の違和感はこれか…と、思っていた。

