うつりというもの

世田谷西署刑事課事務室


「あーあ、せっかく首も身体も身元が判明したのに、振り出しですか…」

夜も更けて、刑事課も赤井と二人きりになり、三田村が自分の机で天井を見上げた。

「振り出し言うな」

赤井も少し上の空でツッコんだ。

柳静香の部屋の捜索の後、もちろん渕上親子に確認したが、二人共面識はなく、出身地なども含めてまるで接点はなかった。

柳静香があの部屋に地元の茨城から引っ越して来たのは2年くらい前で、17年前に行方不明になっていたというか、殺されていた渕上小百合と接点がある訳もなかった。


「ん?どうしたんですか?主任」

余りに上の空な赤井に三田村が聞いた。

「ああ、あの防犯カメラの映像が気になってな」

「マンションのですか?」

「ああ」

三田村も一応見たので、それを思い出しながら首を傾げた。

「何か気になることとかありました?何も持ってないくらいじゃないですか?」

「あ?」

「え?」

赤井が睨むようにこっちを見たので、三田村がきょとんとした。

「そうだよな。何も持ってなかったよな」

赤井が何か気になったみたいに立ち上がった。

「おい、ちょっと付いて来い」

「あ、はい」

頭を掻きながら部屋を出て行った赤井に、三田村は付いて行った。