うつりというもの

19時過ぎまで続けられた室内の捜索では、結局、切断された首は元より、事件に関係するものは一切見つからなかった。

ただ一つ分かったのは、殺された当日、ほぼ死亡推定時刻の22時頃に被害者が外出したことだった。

マンション入り口の防犯カメラに死亡時の格好をした彼女が出て行くところの後ろ姿が映っていたのだ。

友人にも確認してもらったところ、顔は映っていなかったが、背格好は確かに被害者で、その着ているワンピースも彼女の部屋で見たことがあるということだった。

赤井もその防犯カメラの映像を見た。

その時、彼は何か違和感を感じたが、それが何なのか、その時はよくわからなかった。

とりあえず、22時過ぎまでは被害者は生きていた事が確認できたが、多分、直後に殺されている。

駅から近いこのマンションから、あの事件現場までの約500mの足取りは、特にコンビニやコインパーキングの防犯カメラの映像に映っていなかったことから不明だったが、逆に言えば、防犯カメラの無いルートだということで、いくつか想定はできた。

その間で、あっという間の犯行。

しかも、首を切断しながら血を流さない。

さらにその死体を、血を流さずに運ぶ…

捜査員達は、この実行不可能な命題を解かなければならなかった。

真田は、その近辺での再度の目撃情報と怨恨関係の捜査も指示したが、赤井にはそれも無駄な事だと思われた。