うつりというもの

世田谷西署刑事課事務室


赤井は自分の机で、積み上げられたファイルを捲っていた。

「主任、またそれ見てるんですか?もう何度も見直したじゃないですか」

わざわざ下から買ったきたカップコーヒーを赤井の前に置きながら三田村が言った。

「さんきゅ」

赤井が見ているのは、警視庁管内における、首に関する殺人事件のファイルだった。

もちろん、早々に確認されたが、今回と同一犯と思われる事件は見つからなかった。

他の県警にも協力を依頼しているが、特にそれらしい報告は来ていなかった。

「さすがに、俺達が見た様な状況じゃなくても、胴体と頭部が違う事件くらいあってよさそうだろ?」

「いやいや、そんなのあったら、大事件ですから」

三田村は大袈裟に手を左右に振った。

ただ、赤井が気になっていたのは、目の前にあるこれらの事件より古い物で、DNA鑑定もない頃だと、首を切断された殺人事件とは書かれていても、「別人の頭部」だと気付いていなかった物もあるかもしれないということだった。

ここにあるのは比較的近年の物だが、連続犯だとして、考えられるその犯行周期の範囲は網羅されていた。

これよりさらに古いファイルは、地下の保管庫で箱詰めされているが、それを見ても、同様の事件かどうかはわからないだろう。

まあ、事件概要はデータベース化されていて、キーワード検索でも引っ掛からなかったから、さらに紙ベースのファイルを確認したのだ。

「と、すると、本当にこれが始まりなんだろうか?」

赤井は、同様の事件がまた起こると思っていた。


「仕方ない」

赤井はそう呟くと、何か引っ掛かる事件があるかもしれないと、また一からファイルを捲り始めた。

「あ、そうだ。三田村。最近の小説とか映画とかで今回みたいな猟奇殺人を扱ったものがないか確認してくれ」

その模倣も近年の事件には多いことだった。

その時、外が騒ついた。

赤井が何だ?と顔を上げた時、係長の大山がドアを開けて入ってきた。

「どうかしたんですか?」

「ああ、例の身体の方の身元が割れた」

「え!?」

「本当ですか!」

三田村と赤井が顔を見合わせた。