「俺達の目の前でくっ付いていた首が切れて落ちて、そして、皮膚とか溶けてあっという間に白骨化したんだ」

三田村はそう言ったが、遥香はぽかんとしていた。


「…三田村さん、私をバカにしてるんですか?」

間を置いて遥香は三田村を睨んだ。

少し言い方がきつくなった遥香に、三田村が慌てた。

「だから、信じられないだろうけどって言ったじゃない」

「信じられる訳ないじゃないですか!」

遥香は身を乗り出して大きな声で言った。

「しー!しー!」

三田村がドアの方を見ながら口に指を当てた。

遥香は口を尖らせて座り直した。

「だから、俺達も戸惑ってるんだよ。俺達が最初に見たのは特に外傷のない遺体だったんだから」

「でも…」

「遥香ちゃんが信じられないのは分かる。分かるけどさ、実際はそんな怪奇な事があったの!それなのに化学的知識や技術がある奴を犯人として追ってるんだよ。そんな奴、見つかる訳がない。ほんと、アレを見た俺達にしか分かんないって」

三田村は一気に捲し立てたが、遥香は『遥香ちゃん』と呼ばれた事に気付いてなかった。

「…それ、赤井さんも見たの?」

「ああ、主任も、もう一人現場の立番をしていた警官も見た。だから、俺達全員その内容で報告書も上げてる」

遥香は少し考え込んでいた。

「遥香ちゃん?」

もうすっかり『遥香ちゃん』になっていた。

「ねえ、三田村さん。その時の事、もっと詳しく教えて」

遥香は真面目な顔で言った。

三田村は、手を繋がれた訳でもないが、再度詳しくあの時の状況を遥香に説明した。