うつりというもの

「最近、この辺りで連続女性殺人事件が起こっているのはご存知ですよね?」

「え?まさか…」

「そのまさかです」

教授は頷いた。

「4件の遺体は全て頭部と身体がズレています」

「最初の遺体の頭部が、私の母なんです」

教授に続いて、遥香が言った。

「だから、うつりを止めるために調べていたんです」

「そう、ですか…」

住職は困惑していた。

「あの、この結界は、やはり慈澄さんでないと無理なんですか?」

季世恵が聞いた。

「ええ…、そうですね。ただ、また結界を張れるかどうか…」

「え?どういうことです?」

教授が聞いた。

「慈澄殿はもう80くらいのはず。まだご健在だとしても、念を込める体力があるかどうか」

「そんなお歳でしたか…」

教授が唸った。

「とりあえず、連絡は取ってみますが…」

「誰か他に結界を張れる人はいないんですか」

遥香が住職を見た。

「慈澄殿の霊力は尋常ではなかった…。あれほどの方はそうはいません」

住職は渋い表情で言った。