うつりというもの

「まずは、北西部の永凛寺だ」

「はい」

忍は車を出した。

大学から永凛寺まで、車で10分くらいだった。

着くと、忍は寺横の駐車場に車を停めた。

車を降りて4人は門の前に立った。

都内にしては、敷地は大きな方だった。

目の前の大きな門はかなり古く、由緒ある寺だと思われた。

遥香が時計を見ると20時前だった。

教授が、右横にある潜り戸のインターホンを鳴らした。

『はい、どのような御用でしょうか』

しばらくして出たのは若い男性の声だった。

「私、東武蔵大学の教授で園田と申しますが、こちらにある慈澄さんの封印について伺いたいことがありまして」

『え?』

「慈澄さんの封印についてです」

『……ちょっとお待ちください』

そこで一旦切れた。

明らかに戸惑う雰囲気があった。

4人はしばらく、こんな時間なのにまだ鳴いている蝉の声に気を取られていた。

それから少しして、潜り戸が開いた。

「どうぞお入りください」

顔を出してそう言ったのはさっきの声の僧侶だった。

彼に案内されて、庫裏(くり)の応接間に通された。

しばらくして、住職らしい年配の僧侶が入ってきた。