うつりというもの

「世田谷区近辺の地図です。そして、この赤い点と数字が今回の事件現場とその順番です」

「北西側に固まっていますよね」

忍が言った。

「ええ、世田谷西署管内の事件ですから」

三田村が言うと、忍がカチンときた表情をした。

「おい」

赤井が三田村を睨んだ。

三田村が軽く頭を下げた。

「そして、この黒い点が結界のための封印のお札を設置している寺です」

「これからすると、この北西部の永凛寺、北東部の鶴円寺、南西部の道空寺を結ぶ三角の中にほぼ入りますね」

「その通りです。これから言えるのは、南東部の宗律寺の封印が破られたと思われます」

「すぐに調べに行ってきます」

赤井が言った。

「ちょっと待ってください」

教授が赤井を見た。

「問題はもう一つ。ここです」

赤井は教授が指した4件目の事件現場を見た。

「これは、はっきり言って、この三角から出ています」

「ええ」

「すると、ここも問題です」

教授は北西部の永凛寺を指した。

「私の考えですが、結界は囲むだけでなく、その封印力として4つは必要だったと思われます。この宗律寺の封印が破られた後、3つの封印では、うつりの力を削ぐことはできず、移動を抑えただけでしょう」

「なるほど。だから、うちの管内で立て続けに…」

赤井が頷いた。

「そして、その3つの封印も、その内どれかが破られた、または、どこかに負荷が掛かって、そこが破れた。だからこそ、4件目の事件は世田谷区を出たんです」

「それで、出た方向の永凛寺ですね」

「そうです」

「分かりました。その二つもですが、全部調べてみます」

赤井が言った。

「いえ、私達もとりあえず調べに行きますので、赤井さん達は宋律寺と北東部の鶴円寺を調べてください」

「分かりました」

「あと問題は、その結界を張った慈澄という修験僧です」

「ああ…」

赤井も理解した。

「その修験僧が見つからなければ、また結界を張る事ができません。私達も確認しますが、赤井さん達もお寺の方で連絡先を確認してください」

「分かりました」

「お願いします」

赤井と三田村が研究室を出て行くと、教授達は、忍の車で2つのお寺を回ることにした。