「あの、本の原稿はどちらに?」

教授が三和を見た。

「あ、そういえば…」

三和が机の引き出しや、それらしい物を探したが、

「あれ?無いですね。確か紙袋に入れてた物だったはずなんですけど」

「ここは、お父さんが亡くなられて誰か来たんですか?」

「そうですね、父はこの机に座ったまま逝ったので、一旦警察とかも来たんですけど、すぐに病死と判断されたので、何も持って行ってはいないですし」

「わかりました。とりあえず、ここにある物を見せてもらっても?」

「ええ、どうぞ。私は向こうに居ますので」

「あ、この日記とかも…いいですか?」

遥香が少し申し訳なさげに聞いた。

「いいですよ。中はうつりの事ばかりの日記ですから。逆に参考になるかもしれません」

そう言って三和は笑って出て行った。


「じゃあ、俺はこのファイルを見てみる。遥香君はその日記を見てみてくれ」

「わかりました」

教授がファイルを机に置いて見始めたところで、遥香は日記を手にして、横のソファーに座った。

遥香は、広田三郎の妻が殺された1年後の昭和37年から書き始められたその日記を読み始めた。

ファイルと日記には驚愕の事実がたくさん書かれていた。