「そうですか…。わかりました」

遥香は東京へ戻る途中の車の中で、赤井からの連絡を受けていた。

電話を切った後ケータイを見つめる助手席の遥香を、教授が見つめた。

「4人目か?」

「はい」

遥香は前を向いたまま答えた。

「そうか」

教授は季世恵と顔を見合わせたが、それしか言えなかった。

そして、忍は黙って少しスピードを上げた。


山科家を出てお昼を食べた後、広田恒貞について調べたが、ただ、江戸時代中期の絵師としかわからなかった。

青森出身とのことで、うつりについて何か知っていてもおかしくはなかったが、その生家とか作品とか調べる場所の手掛かりがなかった。

それに、うつりを調べているらしい人物についても、同じく何の手掛かりもなかった。

そういうことで、東北に来て1週間も過ぎていることだし、一旦東京に戻ることになったのだ。