首に赤い線が描かれ始めた。

真田は息を飲んだ。

その線が端まで描かれると、首がズレ始めた。

そして、手前に落ちて転がった。

吉祥寺署の捜査員が少し、ざわっとした雰囲気はあったが、とりあえず誰も声を発しなかった。

事前に、どうなるかを教えられていたのだ。

そんな馬鹿なとは思いつつも、管理官自らの説明を受ければ、納得するしかないし、それが目の前で現実に起こったのだ。

首の揺れが止まると、少し顔色が変色したが、それだけだった。


「これくらいか」

「まだあれから5日しか経っていませんから」

赤井は抑揚を抑えた言い方をした。

真田が赤井と三田村を見た。

「赤井、三田村、済まなかった」

「いえ」

三田村は短く答えた。

「起こってほしくはなかった4件目ですが、見てもらえたのは幸いでした」

赤井は遺体を見つめながら言った。

「ああ、そうだな」

真田は複雑な表情になった。

「見たのはいい。だが…」

赤井が真田を見た。

「これを止めるには、俺達は、一体どうすればいいんだ…」

真田は目の前にある市倉伸子の顔を見ながら呟いた。

その台詞に、周りの捜査員達も遺体と首を見ているしかなかった。