「アパートの家賃が、そこしか安い所がなかったからです」



なんかこういう事を暴露するのは恥ずかしい。


と言うか
先生に関係ないよ…。



そういえば、この前も
同じ様な質問されたっけ。


家賃やら学費やらの心配してたみたいだし。

やっぱり未成年の1人暮らしが不安なのかな…。

大人って心配性なんだね。



「どうして…そんな事聞くんですか?」


「…いや」



聞いてはみたが先生は答えない。

チラッと先生を見ると
真剣な顔で運転している。

…と言うより
何か考え事してる様に思えた。


だからあたしも
深くは聞かなかったんだ。




それよりも…
会話が終了し
また気まずい…。


さっきの会話も
結局あたしの事を話したのみ。

『医者と患者』なんだから
デートじゃないんだし
そんな楽しそうには出来ないけれど…
こんな無言はさすがにイヤだな。


「咲桜ちゃん」



そんなあたしの気持ちが伝わったのか、信号で止まった所で
先生は相変わらず正面を向いたまま、真剣な表情で声を掛けた。



「はい」



何気なく返事するが…