「喉渇いたな…」



何か飲もうと部屋を出て
キッチンで冷蔵庫からペットボトルの水を取り出す。




「起きてたのか?」



後ろから聞こえてきたその声に
一瞬ストーカー男を思い出し
あたしはビクンと体が硬直した。


恐ろしくて後ろを振り返る事が出来ず、震えから、持っていたペットボトルを床に落としてしまう。



「咲桜ちゃん…?」



『姫宮さん…』
【あの男が、あたしを呼ぶ】
まだその錯覚と悪夢が
頭から離れない。



「ぃ……ゃ…ッ」



ガクンと膝から崩れ落ち
両手で耳を塞ぐ。



「落ち着け…大丈夫だ」



今度は隣から聞こえてきたその声は、聞いた事があった。

あの男の声じゃない…



恐る恐る耳を塞いでいた手を放しゆっくりと横を向いた。



「先生…」



スーツを着た眼鏡じゃない先生が心配そうに、こちらを見つめていた。



「大丈夫か?」



気を使ってくれてるみたいで
あたしと距離を空けて
必要以上に触れたりせず
優しく声を掛けてくれる先生。


そんなアナタに
あたしは酷い態度をとったんだよね…。