その時は、一瞬にしてやってきた。いや、一瞬のように思えた、という方が正しいのか。先生との関係は、実に一年ほど続いていた。しかし、その関係は驚くほど呆気なく幕を閉じることになる。


特にややこしい経緯があった訳では無い。ただ単純に、学校側にこの関係が知れてしまった。それだけのことだ。


二人合わせて、生活指導担当者や校長から多くの呼び出しを受けた。成人と未成年というだけあって、先生が主に責められる立場へ、僕は慰めを受けることになった。

カウンセラーまで付けられ、散々馬鹿みたいな会話に付き合わされもした。それでも唯一の幸いと言うべきか、両親は二年ほど前に事故で他界していたため身内を交えた妙な揉め事だけは避けることが出来た。


奴らは、強制わいせつに近いものだと考えているらしい。なんと馬鹿らしい、思わず笑いがこみ上げてしまう程つまらないものだった。


一連の騒動から一週間ほど経った頃、僕は先生に呼び出され、久しぶりに彼女の家で会うことになった。もちろん、学校関係者に知られないように。


しばらくお互いに休養を取らされていたため、共に会う機会はこれまで無かったというに近かった。校内での呼び出しの際も、先生と僕は別々の部屋で話をさせられていた。だから、やっとの思いで会う約束を取り付けたのだ。


先生の家に着いて始めに驚いたことは、玄関先で煌々と咲き乱れていた花々のほとんどが、生気を失ったように茶色く濁ってしまっていたことだった。こんなことは今までになかった。手入れの施されていないそれらを見て、僕は先生の様子を想像し、冷や汗を浮かべた。


当たり前のように、慣れた手つきで家の中に入る。すぐ左に備わっているリビングルームに入ると、机に向かって先生がぽつんと座っていた。


その姿を見て、一瞬部屋に入る足を止めたがすぐに動かした。顔を見ないでもわかる。先生は、思った以上に精神的に深く傷ついてしまっているようだった。しばらく何も食べていないのか、見える背中は明らかに前よりもやせ細って小さく見える。


僕が家に入ってきたことに気づいているであろうというのに、こちらに振り返りすらしない。そんな彼女を見て、心に刺すような痛みを覚えた。


「先生」


彼女に近づいて、声をかける。大丈夫か、と言うと先生は俯いていた顔をのろりと上げた。