その日の放課後。
志田はああ言ったが、私はまっすぐ家に帰るわけにはいかなかった。
今帰ったらおじさんたちと鉢合わせる。
それじゃあ、わざわざ無理をしてまで学校に来た意味がない。
多少目眩を覚えつつ、私は花壇へ向かった。
案の定、志田は私を見て呆然とした。
だって、どう考えたって今の私は部活動なんて出来るような状態じゃない。
志田だって、当然私は直帰するものだと思っていたに違いない。
――実際私は、こいつから忠告を受けていたわけだし。
「おい! なんで来たんだよ!」
「……あ、歩いて?」
「アホ! ボケてないで、さっさと家帰れって! 全然回復したって感じには見えんぞ!?」
「ううん。ちょっと横にならせてもらったら、大分ましになった」
「どこら辺が? オレにはわからんけど。ほれ! 早く帰らんと、マジでぶっ倒れるぞ?」
あはは。出来れば私もそうしたいよ。
私がしばらくの間、何も答えられずに黙っていると、志田は「ふー」と溜息をついた。
「なんだ? 帰りたくない理由でもあんのか?」
志田は、抜けているけど馬鹿じゃない。
私の反応を見ていて、すぐに何かあると察しがついたみたいだ。
「……まぁ、ちょっと」
「ならソレを言え。それでオレが納得するようならな、今日は特別、見学だけなら許してやらんでもない」
……言って納得するわけない。
そう思ったが、こいつに隠したところで得することが何にもない。
無理に帰されるくらいなら、事情ぐらい話してもいいかな。