教室へ戻ってみると、美智が柏木の襟首を掴み、文字通り締め上げるようにして迫っていた。


朝学校に来てみれば、教室はぐちゃぐちゃ。

歪んだり天板に亀裂が入ったりしている私の机と椅子。

そして、体中傷だらけのアザだらけになった私の体。

これだけ見れば誰だって、この教室の惨状と私が無関係だとは思わないだろう。

まして美智は、昨日の私の状態と、その後の私の言動から、犯人の目星までつけている。


よって昨日の言葉通り、「発見次第即処刑」が実行されることになったのだろう。

柏木、いや、多分あの場にいた全員が、そこまで深く考えられるような性格ではないんだろう。

例の「親睦会」にしたって、巧みだったのは相手をハメる部分までで、(それにしたって今にして思えば、知的とは言いかねたが)後の事なんてほとんど何にも考えてない様子だった。

頭数だけ揃えて、無理矢理押さえ込めれば証拠は何も残らない、とでも思っていたのだろう。

まったく。

「とにかく犯せりゃいい」

って……、猿かってゆうの!


でもまぁそんなだから、想定していなかったのだ。

獲物があの密閉された(と彼らは確信していた)部屋からまんまと逃げおおせる可能性なんて。

それも、こんなにどうしようもない事件の痕跡だけを残して。

多分、抵抗されることすら、ほとんど念頭に置いてなかったんじゃないだろうか。

で、ことが失敗し冷静になってみれば、現場は荒れ放題のひどい有様。

自分たちに得る者は何もなし。

怖くなって逃げ出してしまった。


――といったところだろうか。

それは柏木を初め、昨日いた連中の顔を見れば一目瞭然だった。


――まぁ、当事者である私から見れば、だけど。

つーか、私の方がその何百倍も怖かったっての!