無意確認生命体


「あはははは! ありがと。その評価、すっごく嬉しい。でもね……、それはあくまでも普段の生活をする上で……っていう条件付きの話。人間として付き合うってなったら……、私は誰とも関われない。……だから本当は、志田に自分の気持ちを……打ち明けるべきじゃなかったはずなの。だって本来なら、男の人は、私が一番遠ざけなくちゃいけない相手のはずだから」

「……"遠ざけるべき"……? 変な言い方するんだな。それじゃあキミ、別に男が怖いってゆうわけじゃ、なかったのか?」

「ううん。……こわいよ。だって、私が遠ざけようって努力してるのに、男の人は、どんどんソレに逆らってくるもの。……私には、その人たちの要求には、どうやったって応えることが出来ないのに……。私の名前。この"雌舞希"っていう変わった名前。コレね、私のお母さんが付けてくれたんだ。どういう意味が込められてるか、わかる?」

「しぶき……。雌《メス》・舞《マイ》・希《マレ》……? うーん……。女らしく育つように……とか、そんな感じか?」

「半分当たり……、かな。この名前は多分ね、お母さんが"私"を初めて見たときの感想を、そのまま漢字にして付けたんだよ。『この子を"雌"として振る"舞"うように育てることで"希"望を見出そう』……そういう、お母さんの気持ちをね」

「んん? どういうことだ?」

「――"雌として振る舞う"。つまり私は……"ホントは女の子じゃない"って……、そういう意味が込められてる名前なの」

「……え?」

「"異常者みたい"、なんじゃないの。私本当に、文字通り異常者なんだよ。男の人の要求になんて、応えられるはずがないの。初めから受け入れられる器官が、用意されてないんだから」