無意確認生命体


「……けっきょく、なんだったんだ? さっきの」

「ご、ゴメンね、バカ泣きしちゃって。あのね、あれ、私が考えた例え話なんだ。どっちも、私以外の誰かと私っていう対比になってるんだけど。あははは! 志田の答えが、あんまり嬉しい内容だったから、思わず泣いちゃった」

「わからん……。雌舞希、ちょっと怖かったぞ。オレ、ヒトが笑いながら泣いてるのなんか、初めて見た」

「ふふっ、ごめん。涙、勝手に溢れてきちゃって、抑えられなかった。……話の、続きなんだけどね、さっきのふたつの例え。どっちも絶望的な組み合わせでしょ? ドーベルマンとチワワなんて、結果なんか見なくたって勝敗は明らかだし、犬と猫で子供なんか出来るわけないもんね」

「え? ……なにソレ。そんなんでよかったのか? そんじゃあオレ、無駄にぶっ飛んだ解釈しちゃってたっつーコト?」

「ううん。そうじゃないの。私はその"ぶっ飛んだ解釈"をしてくれることを望んでた。……だって、じゃなかったら、わざわざこんな答えのわかりきった質問なんて、しないよ。私が志田に伝えたかったコトっていうのは、これ。私はね、普通の人たちと、普通の解釈では、絶対に交わることが出来ない奴なんだ、っていうコトなの」

「……なんだそれ。雌舞希が異常者みたいな言い方だな」

「ん~。それじゃ、志田には私って、どういうふうに見えてるの?」

「どーゆうって……。雌舞希は、オレみたいな変人と違って、マトモな奴だよ。他人の立場でモノ考えられるし、非社交的でもない。スイッチ入ると凶暴になったりするけど、理解できる範囲だし。うん。イイ奴だよ、キミは」