「……や、すまん。まさか、そーゆうことになってたとは、全然思ってなかった」
「私だって……、自分がこんなふうに思ってるなんて、最近まで気付いてなかったよ……」
「あー……。だからツジの奴、昨日あんなに怒ったのか。そう考えると、確かにサイテーだな、オレ」
「こっちこそサイテーだよ。勝手に苛ついて、あげくに開き直って逆ギレしちゃって。……ううう。何やってんだろ……。こんなはずじゃなかったのに……」
「ん? 謝んなくていいさ。雌舞希の気持ちは、素直に嬉しいよ。オレ、告白されるのなんて初めてだし。実際付き合えるんなら、それは嬉しいって思ってる」
「……え?」
「……でもな、オレ、キミの気持ちに応えてやることは、出来ないよ。オレなんかと付き合ったらさ、きっと雌舞希は傷つく。それをオレは望まないし、見たくない。前ん時はオレ、手遅れになるまでソレに気付けなかったけど……、今は初めっからわかってるから。先に忠告しといてやりたいんだ」
「……忠告……?」
「昨日さ。オレが雌舞希に見せた本、あっただろ?」
「……うん……」
「今持ってきてるけど、――コレな。コレ、ツジが図書室から持ってきたヤツだったんだけど。オレ、こーゆう本が世の中にあるって、知らなかったんだよな」
「……それ……今、なんの関係があるの……?」
「ん。まぁ、最後まで聞いてくれ。別に話をそらしてるってわけじゃないから。この本ってさ、まぁメインは男と女の絡みなんだけど。一応ストーリーはあるんだよ。主人公の男の、……ん~……。頭の後ろあたりにカメラが付いてて、それを誰かが見てて、解説する、みたいな感じで話が進むんだけどさ」
「……第三者的な視点で書かれてるってコト?」
「ん? ああ、ソレ。それが言いたかった。――でさ、そん中で主人公の考えてるコトが台詞みたいに書かれることがあって、相手の女に向かって、よく"愛してる"って単語が出てくるんだな」
「……普通じゃん」
「うん。普通だよな? ――でもさ、オレにはどうしても共感できない場面でも、この男は女に"愛してる"って考えてるんだよ。雌舞希はソレ、どういう場面だと思う?」



