無意確認生命体


『ピシッ』、という音を、聞いた気がした。

私の中の、一番奥深いところの、今まで絶対に触れることのなかった、……いや、触れることなど、許されるはずのなかった、脆くて……でも鋭い場所に、『ピシピシ』と、音を立てて亀裂が入っていく。

お父さんの話しなど、もはや私の耳には届いてはいなかった。

聴いていられるはずがなかった。

私が長年、うすうす感じながら、ずっと気付かぬふりをして固く閉ざしてきた、うそ。

『お母さんとの約束』なんて大義名分のもと、まだ存在の意味さえ理解出来ていなかった夜の宴を絶対の悪だと決めつけ、それを中心に全ての事実をこじつけて「アイツ」なんていう、いもしない父の虚像を仕立て上げることで自分のうちに秘めた違和感を覆い隠していた、その深層の真実。

それを、こうもあっさりと砕かれ、中身をすべて曝け出されてしまったのだから。