無意確認生命体


そして、すでに見当がついてしまったにも関わらず、馬鹿を装ってお父さんに問いかけてみる。


「あ……貴方自身、原因は自分にあると……、そう感じたと、認めているんですよね……。……それじゃあ……、なんで……お母さんが病んでしまったのは、自分のせいじゃないって……そう言い切れるんですか……?」


私がやっと自分とまともに口をきいたことに安堵したのか、それとも、私の他人行儀な態度に落ち込んだのか、お父さんは、じっと私の目を見つめた。

長年の天敵に見つめられたはずの私は、少し身体が強ばったものの、かつてのような恐怖は、もはや感じることがなかった。

そしてお父さんは、その答えを、私の目を見たまま紡ぎ出す。

「……病院で、お母さんの精神鑑定が行われたんだ……。追いつめられていたとは言え、雌舞希に手を上げていたわけだから。……その診断結果が、『重度の育児ノイローゼ』……だということだった」


「……育児……ノイローゼ……?」


「……ああ。僕も、初めにそれを聞かされた時は、驚いた。当時は、自分ばかり責めていたからね。もちろん、それで自分の責任がゼロになったわけじゃないって言うのはわかっている。もっと積極的に育児を手伝おうと出来なかったことも、その話し合いの最中に短気を起こして怒鳴ってしまったことも……、僕が悪かったんだ。それは、さっきも言ったように、否定する気もない。だけどその診断結果が、自暴自棄と変わらなかった僕に、とりあえずの冷静さを取り戻させてくれたんだ。そのおかげで――」


「なに……それ?」


「……え?」


「それじゃあ……お母さんが、壊れちゃった……本当の原因は……」