無意確認生命体


私の問いに、お父さんは俯いてしまった。

それに代わって私の隣に座っているおじぃが答えてくれる。

「……しぃちゃんは、宗八――お父さんがぁ暴力をふるったせいで、お母さんが病んでしまったとぉ思い込んでるだろうぅ?」

思い込むもなにもない。

私が父母と三人で暮らしていた時、実際にそれを一番間近で見ていたのだから。

私がうなずくとお父さんは、ばつが悪そうな表情をした。

「確かに、そう思うのんもわかるんだよ。コイツは口が悪いし、馬っ鹿みたいに声が大っきいからなぁ。まだ小っちゃかったしぃちゃんにゃあ、いっつも怒鳴ってるように見えたんだろうなぁ。ついでに、ぶっきらぼうなぁ野郎だから、しぃちゃんとは、どう接したらいいか、わからなかったらしくってなぁ、育児も放ったらかしぃで、お母さんに任っせっきりになっちまった。そのせいで、ちょっとずつ弱っていくお母さんをぉ、何もしないで、ただ見てただけってぇのもコイツが悪い。……でもなぁ……、こいつは、しぃちゃんが言うような暴力は振るってないって、そう言ってるんだよ」

「……そう。……そうだね。……私も……お父さんが、お母さんをぶったりするのは……見たことない。……でも、ただ声が大きかったってだけじゃなかったのは確かだよ。……いっつも、朝も、帰ってきてからも、お母さんを罵倒するようなことばかり言ってたの……私は覚えてるもん! 暴力って、そういう肉体的なもののことだけ、言うんじゃないんだよ!」

それを聞いたお父さんは、俯いていた顔を上げ、

「それは違うんだ雌舞希!」

そしてこっちに身を乗り出してきた。

私は反射的に身をすくませてしまう。

それをまたおじぃに抑え付けられ、ひと呼吸おいて気を落ち着かせてから、お父さんは話しを続ける。