だから、今のこの状況は、私にとって、本当の本当に不意打ちだった。
絶対に侵されることがないと信じ切っていた私の聖域に、その天敵が待ちかまえているなんて事は……。
カクカクと震えだしそうになる足をなんとか抑え、私は隣に立っているおばぁに、抱いている疑問をそのまま口にして伝える。
「お……おばぁ、なんで……この人が、ここにいるの……?」
おばぁは俯いたままで、
「……今日は、志真《しま》さんの誕生日だから……」
こんな答えを返してきた。
……そんなことは知っている。
今朝から無意味な焦燥感にかられたのも、今日がお母さんの誕生日だったからだ。
今日だけは、なんとかして、お母さんに良いところを見せたかったからなんだ。
お母さんは死んではいないけど、今のお母さんは私に会ったって喜んでなんかくれないから、せめてお母さんの「教育」の成果を……私はしっかり危機感を持って生きているって事を……自分自身に示してみせたかったんだ。
……でも、だから?
だから何!?
……それだと、なんでこの人が……、お父さんが、この家へやって来る理由になるっていうの?



