無意確認生命体


何日かして、私の体にアザがあることを気に留めた父は、母にそのことを尋ねた。


そしてこの時、母は初めて、父の前で壊れた振る舞いをして見せてしまったのだ。


それを見た父は驚き、親族に相談して、母を病院へ放り込むことを決めたらしかった。

家には母がいなくなり、父は私にふたりで暮らそうと持ちかけてきた。


……しかし、私はそれを拒絶した。


父が母を毎日"穴"にして、あげくに壊してしまった事実を知っていたから……。

そして、その女を"穴"にする行為は、私がもっとも警戒すべき男の本性なのだと、壊れた母から全身に刻み込まれていたから……。


それからなにより……、いつも叫ぶような声でしか話さない父が、恐ろしかったから……。


私は父が近づくと泣き叫び、狂乱して部屋の隅へ逃げ、縮こまって震えた。


……そんな関係では、共に暮らせるはずがなかった。


母には身寄りがいなかったため、私は父の親戚をたらい回され、そして最後に連れてこられた、この祖父母の家に、こうして引き取られることになったのだった。



それ以来、父母とは一度も会うことはなかった。



お母さんは今も病院に入院していて、月に一度、月末の金曜日に面会が許されている。

だけど、私はお見舞いに行くことを拒み続けた。

お母さんの病状について、詳しく訊くこともしなかった。

理由は、壊れてしまったお母さんの姿をもう見たくはなかった……というのが大きかったけど、それ以上に、あの優しかったお母さんが、例の「教育」の時のように、私に非道く接するのを見るのはつらくて悲しかったから、というのが一番強かった。


そして、お母さんが壊れてしまった原因にして、私にとって最悪の恐怖の対象でもあったお父さんは、引き取られた時におじぃとおばぁに泣いて頼み込んで、この家には近づけないようにしてもらっていたのだ。