「私は、男の人を、"好き"とか、"嫌い"だとか、そういう尺度では、見られないよ」
私がそう答えると、美智は呆れた様な顔で、しばらく私を見つめた後、優しく静かに言った。
「だったら、どういうふうになら見られるのさ? 関心がある? 興味がある? 意識する? 熱中する? アンタの中で、どれかひとつでも、志田は当てはまらない?」
私にとって「アイツ」ら全ては、敵も同然だ。
そして、「アイツ」は全ての男の中に在る。
それはつまり、「男」すべてが敵で、警戒するべき存在で、それはお母さんとの約束で……。
だけど……、なのに、志田は――。
「それ……ぜん……ぶ……あれ……?」
美智の問いにそう答えると、私は何故か、頬が濡れるのを感じた。
「志田のことは……放っとけないし……あいつの、性格……変な奴……だけど……もっと、知りたいって思うし……あいつと……話してると、楽しい」
私は男性を"好き嫌い"なんて尺度で計ることは出来ない。
でも、今美智が上げたような感情は、確かにあいつに対してすべて感じている。
それも油断だとか、隙を見せるだとか、そういう警戒的な感覚とは、また全然違った意味合いで。
私が吐き出すように言い終えると、美智はニカっと笑って、
「おっしゃ! それで良し!」
と言って、有樹ちゃんをつっついていた手で、いきなり私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
――それは、……ホントは全然こんなに乱暴じゃなかったけど……まるでお母さんに頭を撫でてもらった時のような、そんな優しさを感じた。



